素敵なパイプ曲げ
どこからスタートするかという問題もあるし、住民の方の引越しや仮住まいという負担も小さくありません。
そんなときに出てきたのが外断熱改修案でした。
そして、さらにこの改修案の背中を押したのが、国の補助金制度の話でした。
「ストック活用ということで、竣工から一定期聞が経過した既存の古い建物を、さらに二0年以上もつように改修しようという場合に、国から一定の補助が出るそうなんです。
これを利用して、こちらではだいたい二億円くらいの予算で七棟の改修を済ませました」(K氏)。もし新築するとなれば、一棟で同じくらいの費用がかかったでしょう。
二億円程度で七棟すべてがまかなえ、問題が解消されて見た目にも新築のようになるのですから、改修は成功すれば自治体にも住民にもメリットは非常に大きくなります。
「期間的にも、改修なら早期解決できます。
最初に取り掛かった四棟は二00二年一一月に着工して年内に終了。
それがうまくいって評判になったので、残りの三棟も住民の方から『早ようやってくれ』との要望が強くなった。
それで残り三棟は翌年一一月ごろ着工の予定だったのが、町のほうも頑張って早く補正予算を組んで、結局六月には工事完了にもっていけたのです。
住人のみなさんには、こちらのほうがよほど助かったと思います」(K氏)。
改修は「既存の建造物を活用して無駄にしない」という意味でも大きな意味があります。
日本中でこのような外断熱改修が低コストで手際良く行われれば、どれだけ住民の暮らしが健康で豊かなものになるか、一方でいかに産業廃棄物が減るか、そして無駄に消費していたエネルギー(および排出されるC02)が削減できるか、わかりません。
良いことずくめとは、このことではないでしょうか。
無駄でもなんでも消費しつくして需要をあおるというのは、もう誰の目にも時代遅れです。
それは消費者が肌で理解していることであり、多くの企業が「エコロジー」ということを意識して経営努力をしています。
環境に配慮しない経営は、もはや成り立たないというのが世界的な常識なのです。
そのようななかで、日本の建築業界だけがスクラップ&ビルドを繰り返していけるはずがありません。
外断熱改修の成功は、そうしたこれまでの日本のコンクリート建物の考え方そのものをも修正してくれるものと期待しています。
争後何を目指すのか「我々は『生活環境の向上に貢献すること』を基本使命とする」前記の、和歌山県高野町の陵雲団地の外断熱改修をはじめ、全国で外断熱改修工事や新築工事を行っている東邦レオ株式会社(橘俊夫社長)の企業理念です。
東邦レオは、大阪に本社があり東京以西に支庖、営業所、工場をもつ建材の製造及び販売、施工を行っている企業です。
前身は、共栄パ−ライト販売株式会社(後に東邦パ−ライト株式会社)でパ−ライトの販売施工を行ってきました。
パーライトとは、特殊な火成岩(真珠岩)を適正な粒度に粉砕し、加熱、発泡させた白色の軽い粒状物です。
優れた吸音性、耐火性、断熱性をいかして、左官用モルタル、断熱コンクリート等に幅広く利用されている材料です。
したがって、誕生した時から断熱工法とは縁があったのです。
その後、ビルの革命的な断熱材として登場してきた硬質現場発泡ウレタン吹付工事を行い、施工実績は関東以西ではNo.1の会社になっています。
ある意味では内断熱を支えてきた企業でもあります。
その企業にとって内断熱を否定する外断熱は、企業活動にとって敵対するものと考えるのが一般の企業経営者ではないでしょうか。
しかし、橘社長は企業の使命として「生活空間改善事業」の構築をすすめ、緑化事業や外断熱事業に積極的に取り組んでいます。
いま人々が求めているのはきっと「心の満足」。
安心して子供たちに引き継いでいくことのできる社会や地球環境の創造に向けて前進しなくては。
T社長は経営の本質を学問に例え、「真の学問(経営)とは、小欲を大欲に変えるための手段なのだ。
小欲とは己の持つ欲求を満たすことであり、大欲とは人間そのものの幸福を満たすことである」(二宮尊徳)と語り、地球上の次世代の人々が幸福に暮らせるための事業および、「人に優しい快適住環境を考える」ことを目標として緑化事業や外断熱事業に取り組んでいます。
先に触れたN産業株式会社は、主に内装材や設備の販売を行ってきました。
これを発展させつつ、環境負荷のかからないサスティナプル(持続可能)な社会への貢献をめざした事業展開を進めるなかで外断熱工法に出会いました。
同社は内装材や設備の開発、製造、販売ばかりではなく、現在では建物の躯体に関連する事業も積極的に進めています。
特にドイツの湿式外断熱工法の施工販売とコンバージョン(改修と用途転換)への取り組みは新しい動きとして注目されています。
代表取締役社長・N数生氏にお話を伺いました。
「きっかけは不況だったのです。
バブル後、とくに建築業界は厳しくなって、そのしわ寄せが下請け業者に来ました。
当時われわれの最も大きなシェアは石膏ボ−ドなどの内装材の販売でしたが、そのお客さんが次々に倒産した。
それで専門工事業として確立していく必要を感じ、私は一九九八年にアメリカへ渡りました。
アメリカのコンバージョンを見て、日本も必ずこういうことが求められる社会になっていくだろうと思いました。
古いマンションやオフィスをホテルに改造して使う、古い倉庫街を新しい店舗に変えて活用する、こういうことができなければサステイナプルな社会は実現しないのではないか、そう強く感じました。
ところがアメリカの建物を見ると日本とはぜんぜん違うんですね。
内装はかなり適当ですが、躯体や土台はものすごくしっかり造られている。
古い建物も、石造で堅牢そのものです。
この土台があるから改修やコンバージョンも可能なんだと、はじめてわかりました」。
N産業は、現在では外断熱の建物では欠かせない複層樹脂サッシをゼネコンなどに供給する企業でもあります。
住宅の改修時に在来のアルミサッシから樹脂サッシへ交換することは、その当時から行われていました。
ただし壁の厚みなどから困難な場合が少なくありませんでした。
N氏はアメリカの建物の十分な壁の厚みを見て、そもそも躯体がこうでなければ新しいサッシさえ入れられないではないか、大事なのは躯体だと、日米の現実の違いをまざまざと実感してきたのです。
「サスティナブルな社会のためにわれわれはコンバージョンをやろう、そのためには建物の構造をしっかりさせなければダメなんだと、非常に大きな課題を背負ってアメリカから帰ってきました。
それからまもなく『史上最大のミステーク』が出て、私も読みました。
それで樗然とした。
やっぱりこういうことを考えている人っているんだなと思った。
それから、本気で取り組みはじめたわけです」(N氏)。
こうしてN産業はとりあえず複層樹脂サッシの供給というかたちで、外断熱の建物にかかわっていきました。
そうしたなかでドイツ最大の外断熱システムメーカーSTO(シユトー)社との縁ができ、外断熱事業への具体的な歩みを始めたところです。
「乾式の外断熱の勉強させてもらって、なるほど素晴らしいと感じました。
一方で通気層のある外断熱は北国以外では重厚すぎるのでは、とも感じていました。
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